1859年。イギリス人の化学者であるロバート・オーガスタス・チーズブロー氏が、弱冠22歳にして米国・ペンシルバニア州のタイタスビルという小さな町を訪れた時の話です。
タイタスビルはアメリカの石油産業の発祥の地として知られていますが、彼は石油を採掘する過程で掘削機に付着する「ロッドワックス」という副産物に興味を抱きました。
採掘作業者たちは、作業中に負った切り傷や火傷にロッドワックスを塗りつけていたのです。
チーズブローは5年間におよぶ研究の末、ロッドワックスを精製するための「トリプル精製プロセス」を発明し特許を取得します。
それからさらに5年後の1870年。抽出・精製技術をさらに高め、ニューヨーク州ブルックリンに工場を開設。砂漠の暑さでも溶けず氷点下でも凍らない不思議なジェリー「Vaseline」(ヴァセリン)と名づけました。
時には自らの身体を傷つけてヴァセリンを塗り、過去の傷が治ったことを見せるという過激な実演販売が功を奏して1分間に1瓶が売れるほどになり、アメリカの家庭の常備品となりました。
その裏では類似品が出回るようになりますが、現在でも使用されているブルーのロゴマークは、トリプル精製プロセスを経て抽出された本物の「ヴァセリン」を使用した製品であることを示すオリジナルの証なのです。
1933年、チーズブロー氏は96歳でこの世を去りますが、その後数十年の時を経て「ヴァセリン」は全世界で販売されるブランドに成長し、人々の肌をうるおしています。
ロバート・エドウィン・ピアリー氏による北極点到達の際に携行されたり、2度の世界大戦において兵士たちの治療に用いられるなど、「ヴァセリン」にまつわる逸話は枚挙にいとまがありません。
あなたならではの独自のご使用方法も、140年以上の長きにわたる「ヴァセリン」の物語の1ページに加えてみてはいかがでしょうか。